しかもこのSさん、ニコッともしない。
冗談にも反応してくれない。
訓練だって熱心にやるわけでもない。
"あまり感じよくないなあ"というのが、いつわらざる私の受けた印象であった。
もちろん、そんなことは表に出しはしないし、関わり方が違うわけでもない。
それくらいは、プロとして当然のことだ。
そのSさんの家に訪問することになった。
なんでも、家の改築をするとかで、その際、風呂やトイレを便利なようにつくり直したいので、アドバイスがほしいというのです。
立派な家です。
保健婦さん、看護婦さんの後からついて入った玄関も広い。
「どうぞ、どうぞ」と、奥さんにスリッパを並べてもらいながら、和室に続いたリビングルームに入る。
Sさんは、あい変わらずニコリともしないでソファーに座っています。
だが、私はハッとした。
豪華なソファーにガウン姿で座り,、庫本を片手で押さえているSさんは、まぎれもなく主という印象なのだ。
ニコリともしない表情も、訓練教室で見れば無愛想ということになるが、ここでは、主人としての威厳そのものなのです。